「現在の中三までの教科書を概ねマスターしたら大変なもの知りになれる」という触れ込みです。
自分が中学生の頃から、どれだけ内容が変わったのか、気になったので読むことにしました。
人生に必要な教養は中学校教科書ですべて身につく
地理
地理が読み解ければ世界が見える
●EU内には経済格差がある
・移民(安い労働力)によって仕事を奪われる
・イスラム教の戒律の地域による多様性
・人種差別
●モノカルチャー(限られた作物や資源)
・中国への大豆輸出のために、アマゾン川流域が開発され温暖化促進
・日本へのエビ輸出のために東南アジアのマングローブ林が伐採
・フェアトレード(新興国から搾取しない)
歴史
鎌倉仏教
源平の争乱の頃に登場した法然は、平安時代からの浄土信仰を継承し、一心に念仏(南無阿弥陀仏)を唱えれば死後、誰でも極楽に行けるという教え(浄土宗)を説いた。
また法然の弟子・親鸞は、自分の罪を自覚した悪人こそが救われる対象であると説いた(浄土真宗・一向宗)。栄西や道元が日本に禅宗を伝えたのも同じ頃。
鎌倉時代後半には法華経を重視した日蓮が現れ、法然の弟子に学んだ一遍はおどり念仏を広めた。この時代に皆が仏様にすがりたくなったのは戦乱の他、旱魃による飢饉、疫病の流行、地震などの自然災害が頻発したのも大きな理由。
公民
社会の仕組みをインプットして足元を固める
「グローバル化」「少子高齢化」「情報化」「持続可能な社会」
私たちの生活や社会は、グローバル化、情報化、少子高齢化などの影響を受けて、大きく変化し続けている。
社会では環境・エネルギーや人権・平和、伝統文化・宗教、防災・安全などに関わる様々な課題が生じている。
これらの課題を解決するために、「持続可能な社会」という考えに立つことが大切。
持続可能な社会とは、将来の世代の幸福と現在の世代の幸福とが両立できる社会を意味する。
例えば、地球温暖化は、目先の便利さばかりでなく、将来の世代のことを考え、自らの生活の在り方を見直さなければ解決できない課題だと言える。
自衛隊は、1950年の朝鮮戦争をきっかけに連合国軍総司令部(GHQ)の指示で作られた警察予備隊を前身として、日本の安全を保つことを任務として発足し、冷戦時代を通して人員や装備を増強してきた。
自衛隊が憲法第9条や平和主義に反するのではないかという議論もあるが、政府は自衛のための必要最小限の実力組織に過ぎない自衛隊は戦力にあたらず、戦争放棄といっても自衛権まで放棄したわけではないので憲法違反ではない、としている。
日本の防衛費は、平和主義をとっていることで他国の軍事費に比べ国内総生産や予算に占める割合が低く、そのおかけで戦後に驚異的な経済発展を実現できたという一面がある。
しかし、防衛費の総額では世界有数の規模になっている。
私たちも、権利と共に責任を負っていることを忘れてはならない。
自ら知識や情報を広く収集し、的確な判断力を養い、それに基づいて行動する必要がある。
また、私たちは、消費生活を通じて資源やエネルギーを使い、環境汚染やごみ問題を引き起こしている。
資源を節約し環境に配慮した消費を行う責任が私たちにはある。
理科
日常が科学で成り立っていると知る
山中伸弥博士は、ネズミやヒトの皮膚細胞において、ある四種類の遺伝子を導入すると、その働きによって幹細胞としての能力が復活することに気づいた。
この方法で作られたのがiPS細胞である。
iPS細胞作製の技術は、移植医療に必要な臓器を作ることや、病気を治療する薬や方法の開発に繋がると期待されている。
爆発は終わりではなく始まり
地球にある全ての元素は宇宙で創られた。
これらの元素は、恒星の中心部や恒星がその一生を終える時に起こる大爆発(超新星爆発)で創られ、宇宙空間に撒かれる。
撒かれた様々な元素を含むガスや塵を材料にして、新しい恒星や惑星が生まれる。
宇宙は、約138億年前に誕生したと考えられており、太陽を中心とする太陽系は、約46億年前に宇宙を漂うガスや塵から誕生したと考えられている。
ということは、私たちの体をつくっている元素は、一度はどこかの星の中にあったことになる。
私たちは「星の子ども」なのである。(東京書籍3 221ページ)
池上「廃品回収によって太陽系も地球も我々の体もできたのだ。私がこの話に感動するのは、仏教徒だから。輪廻転生の考え方にぴったりはまる。火葬されれば、色んな元素が大気圏にガスとなって出て行く。やがてそれが、何十億年後か分からないけれど、どこかの星の材料になったり、もしかすると生命体の一部に取り込まれているのかもしれない」
佐藤「『阿毘達磨倶舎論』にあるような、宇宙は有情の因果関係で出来ているというインド上座部仏教の考え方です」
池上「こういう宇宙物理学をはじめ、科学がどれだけ進んでも、仏教の考え方とは矛盾しないのです」
佐藤「あらゆるものが循環している」と考える点で、仏教と古代ギリシャの世界は似たところがあります。それに対して、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教は始点があって終点があると捉えるわけです」
地名について
沼、池、潟、洲、川などが付く地名は、元々低地で軟弱な土地で、水が豊富で生物が住みやすい土地だったことを示している。
また、谷、沢、窪、久保などは谷の地形を表す地名。
周囲より低い土地で、大雨の時に雨水が集まってくる可能性がある。
「カマ」と読む釜や鎌などは、古い言葉で津波に浸食された地形を表していると言われている。
「スカ」と読む須加なども水流により浸食された地形を意味し、海に近い場所では津波に襲われてきた場所である可能性がある。
「落合」というのは、川と川がぶつかるところ。
地名というのは「名が体を表して」いることが非常に多い。
数学
アクチュアリーとは?
保険では、「支払う保険金の合計」と「集める保険料の合計」を同じにすることが基本。
従って、単純に考えれば「支払う保険金の合計」を「保険に加入した人数」で割った金額を保険料とすればよい。
ところが、実はそう簡単なことではない。
例えば、自動車保険では事故の件数は毎年変化し、支払った保険金の額も変化する。
また、若い人や高齢者は事故を起こしやすく、その分保険料を高くすることも考えられるが、年齢別の人口の構成も毎年変化する。
このように、事故の件数や人口の構成が毎年変化しても、保険金の支払いに問題が無いように保険料を決めなければならない。
アクチュアリーは、事故の発生率といった様々な数値をもとに、統計や確率などの数学を用いて、保険料を計算している。
このような数学が保険などの制度を支え、私たちが安心して暮らすために役立っている。
国語
中学の教科書は現代文教材の「完成形」
論理性も感性も磨く、最も重要な「教科書」である。
日本語の読解力に関しては、義務教育レベルをマスターすれば「卒業」できる。
英語
ひたすら音読して、「中三レベル」をキープする
昔と違って、中学の英語教科書には「実戦」ですぐに役立つコンテンツが盛りだくさん。
社会人の学び直しに適した教材である。
騙されたと思って、中三の教科書を中心に隅から隅まで何度も音読する。
英語については、シンプルにそれを実践しよう。
道徳
自分と他人の「スタンダード」を知る
最後に一つ。
人は自分の気持ちを話すことが大好きである。
分かってもらいたい欲求は誰にでもある。
二人で会って、半分ずつの割合で喋ったとしても、どこか物足りなさが残る。
それが人間。
自分の気持ちを伝えたいという思いは、それほどまでに強い。
だからこそ、聞いてあげることが大事。
コミュニケーションの原点は、相手の話をよく聞くこと。
それが、私(池上彰氏)が記者生活から得た結論である。