「分かりやすい」でお馴染みの池上氏が「経済学」をどのように解説しているのか興味が湧き、読むことにしました。
ところどころ現在の経済状況に照らしながら、要約したいと思います。
池上彰の経済学/池上彰
経済とは何?
明治維新以降、海外から色々な言葉が入ってきた。
「エコノミー」は、中国の「経世(世を治める)済民(民を救う)」という言葉から「経済」と訳されることになった。
経済学とは、資源の最適配分を考える学問。
マクロ経済学—大きな経済のメカニズム
ミクロ経済学—家計や企業がどんな行動をとるか
需要曲線と供給曲線の読み方だけ理解すればいい。
経済成長率とは、GDP伸び率のこと
GDPとは、付加価値を合計したもの。
自動車を例に考えると、
① まず製鉄所が鉄の材料を60万円で買う。
それを自動車用の鉄に加工し、メーカーに100万円で売る。
差額の40万円が付加価値。
② メーカーはこの100万円の鉄を自動車にしてディーラーに150万円で売る。
差額の50万円が付加価値。
③ ディーラーは150万円で仕入れた車を客に営業して200万円で売る。
差額の50万円が付加価値。
これらの付加価値を合計したものがGDP、その国の富である。
お金はなぜお金なのか—貨幣の誕生
貯金、財、買など「貝」が付くのは、昔は貝殻がお金だったから(幣とは布)。
金(貨)を両替商(銀行の元)に預けると預かり証が発行される(紙幣)。
最初は必ず金と交換できた(1932年まで)。
金融とは、お金を融通すること。
借りた人がお金を返してくれるかどうかをキチンと見極めるプロの眼力があるからこそ銀行として仕事が出来る。
世界に影響を与えた4人の経済学者
アダム・スミス『国富論』
富とは、国民の労働で生産される「必需品と便益品(消費財)」である。
カール・マルクス『資本論』
資本主義経済は失業者を生み出すと批判。
ジョン・メイナード・ケインズ「自動安定化装置」
非自発的失業者を救済する仕組みを作っていくことが景気を良くしていく。
赤字国債を発行して公共事業を行う。
ミルトン・フリードマン「新自由主義の旗手」
経済を制御するためには、お金の量を考えればいい。
マネタリズムというのは、ケインズの主張する公共事業や累進課税に否定的で、世の中のお金の量さえ制御していれば経済は上手くいくという考え方。
日本では、1996年に橋本内閣が金融ビッグバンと呼ばれる金融制度改革を行い、金融機関に対する規制を次々と取り払った。
これにより金融機関の再編が加速した。
そして小泉構造改革では、規制緩和の考え方が雇用政策に及んだ。
派遣労働の自由化である。
その結果、リーマン・ショックにより大量の派遣切り問題が深刻化した。
これを機に、新自由主義政策に対する批判が高まった。
デヴィッド・リカード 貿易が富を増やす
それぞれの国が得意分野に専念し、貿易によって適切に再分配すれば、両方の国の利益が高まる、という原理。
第二次世界大戦以降、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)やそれが発展したWTO(世界貿易機関)が出来た。
1986年ウルグアイ・ラウンドでは、(米を輸入しない)日本がやり玉にあがった。
WTO(164カ国)で会議すると時間がかかるので、仲のいい国同士でルールを決めようとFTAやEPAが生まれた。
日本が現在EPAを結んでいる国は、スイス・インド・ASEAN・メキシコ・ペルー・チリなど。
日本は農業国ではなく工業国とEPAを結んでいる。
インフレとデフレ—合成の誤謬
デフレとは、持続的な物価下落。
インフレとは、持続的な物価上昇。
モノの値段が上がると更に上がるかもしれないから今の内に買っておこうという人が殺到するので結果的に更に需要が増えて、またモノの値段が上がる。
その逆がデフレ・スパイラル。
サッカー観戦で自分だけ立っていると良く見えるが、全員が立つと見えにくくなる。
これを合成の誤謬といい、インフレ、デフレが加速してしまう。
消費者物価指数が上がればインフレ、下がればデフレになる。
インフレ、デフレになった時、何とかそこから脱出するための「インフレターゲット」という金融政策がある。
その国の中央銀行が一年間の物価上昇率をこの程度にするように努力しますという目標を最初から国民に向けて発表し、そのために色々な努力をする政策のこと。
流動性の罠
日本は金利がほぼゼロで、流動性が高まったにもかかわらず企業の投資が全然伸びない。
今一万円のモノが、来年は九千円で買える。
モノの値段が下がるということは、お金の価値が上がっていくということ。
乱暴な言い方だが、タンス預金でも金利が10%つくようなものだから現金主義になる。
これを「流動性選好」という。
年金や預金で生活する人にとってインフレというのは極めて深刻な事態になる。