日本の株式市場の主要プレイヤーである「外国人投資家」。
その姿をイメージ出来ているかどうかで投資成績は格段に変わります。
この本から、どういった企業に投資すべきかを学びました。
日本株を動かす外国人投資家の儲け方と発想法
外国人投資家の「正体」と「売買手法」
全ての資本が外国であれば「外国人投資家」。
代表的な外国運用会社は、米・ブラックロック、英・ベイリー・ギフォード、仏・アムンディ、新・GIC、中東・ADIA等である。
これらは東京に事務所を構え、調査や運用は日本人がやっていることもあるが、資本が外国なので外国人投資家として扱われる。
日本株をどのくらい買っているのか?
外国人投資家の日本株保有比率は全体の約30%。
外国人投資家は時価総額の大きな企業を好む。
ESG指数に採用されないと投資対象にならない。
株の買いパターンは?
外国人投資家の日本株の売買シェアは約7割。
個人投資家が約2割強、信託銀行(年金)が3%。
ベンチマークはMSCI(モルガン・スタンレ-・キャピタル・インタ-ナショナル)が多い。
そのため、年四回実施されるMSCIの銘柄入替は注目度が高い。
多くの外国人投資家は低成長の日本株を構造的にアンダーウエイトしており、景気や企業業績が良い時だけ、中立に近づけるケースが多い。
「ドル建て日経平均」は見ていない。
大量保有報告書で「投資の本気度」が分かる
保有率が5%を超えた時、また1%以上の変動があった場合に変更報告書を出す必要がある。
大量保有報告書を出した主な外国運用会社は、金融庁のEDINETで検索できる。
大量保有報告書を出すということは、大手運用会社がその銘柄の長期保有に自信があることを意味し、5%を保有した後も買い増すことが多いため、個人投資家は大量保有報告書を見た後のコバンザメ投資が有効かもしれない。
日本株投資は「巨大な運用ビジネス」の一部
年金やファンドコンサル事業などを行っているウイリス・タワーズワトソンは年に一度「世界のトップ500運用会社」を発表している。
投資先の比率は、北米57%、欧州33%、日本5%。
世界の運用会社を悩ますパッシブファンドの台頭
アクティブファンドは、上昇相場より調整相場で株価指数をアウトパフォームする傾向がある。
「アクティブ運用は手数料が高いのに株価指数に勝てない」との批判が出る中、資金の流れはパッシブ運用にシフトしている。
但し、株価を付けているのはファンダメンタルズを調査して、自らのフェアバリューを決めて売買するアクティブ・マネージャーなので、アクティブ運用が無くなったら、株式市場は成り立たない。
その点では、パッシブ運用はアクティブ運用にただ乗りしているとの指摘もある。
貪欲に利益を狙うヘッジファンドとHFT
ヘッジファンドの資産は北米67%、欧州23%、日本を除くアジア7%、日本は1%未満。
ヘッジファンドは、下げ相場でも収益を上げることを標榜しており、運用手法別の残高では35%がロング・ショート、16%がマルチ、11%がCTA/マネージド・フューチャーズ(商品・先物)、9%がイベント・ドリブン(M&A・自社株買い・増資)、7%強が債券、7%弱がマクロ、6%がアービトラージ(裁定取引)。
HFTの実態とは?
アルゴリズム取引の中でもミリ秒単位で鞘抜きを繰り返す取引はHFTと呼ばれる。
米国では約定株数の約5割、欧州では約4割がHFTと推計されている。
HFTの功罪
フラッシュクラッシュが起きたことで、HFTを登録制にするなどの規制が生まれた。
成功するファンドマネージャーとは?
精神的にタフ、動物的な相場観、勉学に裏付けられた歴史観があったり、他人と違う考え方が出来たりするようなファンドマネージャーが成功を手にする。
相場が引けた後も企業やアナリストとのミーティングを行い、17時以降は決算短信や説明会資料などを読み込み、決算期には数百社の資料を読むような人がいる。
外国人投資家は日本をどう見ているのか?
世界経済の強さを示す指標としてはISM、OECD景気先行指数、米10年債利回り等が重視される。
日本独自の経済指標としては、消費者物価、鉱工業生産と在庫サイクルが注目されている。
日本の輸出に占める中国比率は米国同様約二割なので、中国PMI指数が注目される。
「金融関連」で注目されているポイント
日本経済(内需)の象徴とみなされる銀行・不動産株は、日本の景気への強気が高まると買われる一方、日本の景気に弱気になると売られる傾向がある。
東証銀行株指数の対TOPIX相対パフォーマンスと米国10年国債利回りは、高い相関がある。
外国人投資家が買いたくなる日本企業とは?
外国人投資家は「会社は株主のモノ」「経営者は株主のために働くエージェント」と考えている。
従って、株主のために高いリターンを出すのは当然で、そのためには会社を売買したり、従業員をリストラしても構わないと考えている。
外国人投資家は、持続的な株高の為に構造改革策、特にコーポレートガバナンス(株主のために働く仕組みになっているか否か)改革が必須だと考えている。
外国人投資家がROE(最低二桁)を重視するというのもその一環である。
企業は、リストラや自社株買い、配当で株主資本を管理することは可能である。
日本企業の配当性向は低すぎる!
日本企業は米国企業より成長性が小さいにも関わらず、総還元性向は約50%と米国企業の約半分しかない。
「キャピタル・アロケーション」が重要
外国人投資家と話していると、企業の資金使途を問うキャピタル・アロケーションという言葉が頻繁に出てくる。
決算短信に掲載されているキャッシュフロー計算書を見ると、企業が営業活動から得られたキャッシュフローを設備投資、配当や自社株買い、借入金の増減にどう使っているか分かる。
英米の大企業であれば、株主からの圧力で、設備投資に使わない資金は株主に還元することが求められる。
バランスシートへの関心が低い日本企業に不満
外国人投資家は、リターンを産まない無駄な現預金は保有すべきではない、倒産リスクが高まらない程度に負債比率を上げるべきと考える。
外国人投資家はオーナー社長を好む
テクノロジーの進化が速く、グローバル競争が厳しくなる中、社長が素早く的確な判断をできるかどうかが企業業績を左右する面が強くなっている。
世界的に社長の報酬が上がっているのも、優秀な経営者の希少性が高まっている為と解釈される。
一般に、日本企業では社内昇進のサラリーマン社長がほとんどで、四年程度で代わることが多く、社長時代にはリスクを取らずに平穏に過ごして、会長になることを目指すケースが少なくない印象である。
それに対して、外国人投資家は株主と経営者の目線が一致する、社長が創業者で大株主であるオーナー系企業を好む傾向がある。
外国人投資家からは、社長の持ち株比率が高い銘柄のリストが欲しいというリクエストをもらうことがある。
外国人投資家は株主価値を数千億円規模で増やしてくれる経営者は年収数十億円貰っても構わないと考えている。
外国人投資家の投資行動を活用して儲けるための7つの方法
❶外国人投資家の「日本株売買の季節性」を活かして売買する
外国人投資家は4月に日本株を買い、8~9月に売り越す傾向がある。
米国株の季節性が外国人投資家の日本株売買の季節性を作り出しているとも言える。
❷外国人投資家が提出する「大量保有報告書」を見て買う
海外大手運用会社は大量保有報告書を出した後も同じ株を買い続けて10%程度まで保有することがあるため、金融庁のEDINETに開示された直後に、コバンザメ的に追随買いを入れれば、海外大手運用会社と同様のパフォーマンスを得ることが出来る。
❸外国人投資家が好きな「オーナー系企業」へ長期投資する
IPOの段階から将来的に大きくなりそうな新興オーナー系企業に投資するのが個人投資家の投資戦略になる。
❹外国人投資家が「日本経済全体を悲観」した時に逆張りで買う
人口が減る日本経済は低成長で財政赤字も巨額である。異次元の金融緩和にも関わらず、デフレ脱却もままならず、外国人投資家からの日本の政治・経済への評価は低い。しかし、対外純資産が世界一であることが円買いの安心感を与えている(戦争をしないことも)。
❺外国人投資家が好きな「構造的な投資テーマ」に乗った銘柄を買う
英国投資家は歴史本を、米国投資家は経営本を好む。外国人投資家は人口動態、働き型改革、EVなどの構造的なテーマに関連する企業の成長性に注目している。
❻外国人投資家より前に「時価総額が大きくなりそうな企業」を買う
❼外国人投資家が知らない「身近な投資アイディア」で売買する