本から学ぶ

アフターコロナ 次世代の投資戦略/吉田繁治

ウィズコロナというニューノーマルの世界。

教養をアップデートするつもりで購入しました。

コロナ後の世界経済については当然ですが、投資についても物凄く勉強になりました。

アフターコロナ 次世代の投資戦略/吉田繁治

日本の現状について

2000年からの高齢化と2015年からの人口減少

労働者一人当たりにおける生産性の伸びの低さ(0.5~1%)

実質GDPの期待成長率が1%程度と低いこと

人的生産性と働く人の両方が伸びないと実質GDPは増えない

期待GDP成長率がOECD(先進37カ国)で一番低い日本は、7年の異次元緩和とゼロ金利があっても銀行貸付金は増えず、インフレ率2%は果たせなかった。

2022年夏から民間需要が増え、経済は「需要>供給」になり、物価は2~3%へと上がっていく。これは日・米・欧・中に共通である(スタグフレーション)。

日本にある270万社のうち、赤字法人は169万社である。倒産は不況のさなかではなく、需要が回復し、金利が上がっていく時に増えるものである。

財政破産は、国債を売買している債券市場がインフレと通貨安の期待に代わり、そこから市場の投資家の「期待金利」が上がることがキッカケになる。

期待金利とは、銀行・生損保・海外ファンドなどの国債の売買を行っている投資家が、その国のインフレ率から予想する一年後くらいまでの予想金利である。

インフレになると金融市場の期待金利は上がる。平均金利が0.6%と超低金利の国債残を大量に抱える日本のような国では、2%くらいのインフレと通貨安が重なると借換債発行が137兆円ある政府財政はデフォルトに向かうだろう。

インフレやデフレと国債価格、及び国債金利の関係

国債発行時に、政府が額面に対する発行金利を決めて銀行の入札を募集する。

公社債市場で「100万円額面・満期10年・発行金利0%」の国債が98万円で売買が成立すると、金利は以下のように上がる。

●満期償還額100万円‐今日の流通価格98万円=2万円

1年の金利2000円÷98万円=年利0.20%

➡結果として、発行金利0%の10年債の金利が0.2%に上昇した。

金融市場でインフレ予想が生じると、低金利の国債は損になるので売り手が多くなって流通価格が下がり、金融市場の国債金利は上昇する。

逆に金融市場でインフレ予想が下がり、高金利の国債の人気が高くなると買い手が増え、債券市場での流通価格が上がり、国債の金利は下がる。

※「国債金利(3%)-期待インフレ率(1%)=利益(2%)」

債券市場での金利決定の仕組みを知らないエコノミストも多い。

2023年に財政が破産に向かう確率は70%。

但し、22年から2%のインフレにはならずに物価上昇が0%台を続けるなら0%の国債発行もできるので財政破産は先送りされる。

これは「先送りされるだけ」であり、なくならない。

日本の政府負債は財政が赤字の為、毎年増え続けるからである。

物価が2%から3%に上がる時期が来て、金利が2%から3%に上がると、日本の財政は新興国のように破産する。

今回のコロナショックから、日本の財政はほぼ永久に黒字へ転換しないことが明らかになったので、財政破産は「それがいつかという時期の問題があるだけ」。

コロナ対策費の225兆円(税収の3.5年分の赤字)を出すことにより、破産の時期が3年は近づいたと言える。

20・21年に下がるGDPが22年末から一転して回復する時(GDPは前年比プラス成長=需要の回復)は、経済原理から市場の期待金利は上がらざるを得ない。

市場の期待金利が3%に上がると、額面から約27%も下がった国債の時価評価により、

❶約600兆円国債を保有する金融機関(銀行+生保+証券会社+海外金融機関)と、

❷500兆円の国債を持つ日銀も資産(所有債券)の含み損から債務超過になり破産

※金融機関の破産とは、企業のような銀行取引停止処分ではなく、支払用の現金が不足し、預金と送金、銀行間債務の支払いが出来なくなることである。

ここが重要だが、金融市場での期待インフレ率2%、実質期待GDP成長1%から、

❶国債金利が3%に上昇し、500兆円の日銀保有国債価格が23%下落(含み損116兆円)して、

❷日銀が債務超過になったことを海外の金融機関とヘッジファンドが知れば、

❸「円と円国債の先物」を外為市場で売り浴びせるように変わることである。

※「海外は、円国債は少ししか持っていないから売り浴びせることはできない」という通説は、デリバティブに属する先物が多い世界の債券市場を見ていない。

米国系ヘッジファンドの運用責任者は「日銀が買ってきた国債価格と株が下がって債務超過になった時は、円の暴落に賭ける大きなチャンスだ。円と国債の先物売り、日本株の先物売りを大量に仕掛ける」といっている。

元本資金が300兆円のヘッジファンド、そして欧州と原油の中東に多い数百兆円のSWF(国家ファンド)が行っているのは、デリバティブである先物・オプションの売買である。

先物と証拠金取引は自動的にレバレッジがかかる。

先物売りが殺到すれば、日銀の債務超過からの❶大きな円安、❷金利の上昇、❸国債の暴落が3つ同時に来て、日銀と政府の同時破産になっていく。

3%の期待インフレになると、現金100万円の一年後の価値は「100万円×(1-期待インフレ3%)=97万円」に下がる。

インフレで減価するマネーの価値を補うため、金利を3%(3万円)付けないと100万円を貸す銀行、あるいは100万円の額面の国債を買う銀行は無くなる。

*日本がインフレになった時の2022年末から2023年にかけての通貨投資では「円売り/スイスフラン買い」が大きなチャンスになる。

同時破産の可能性があるドルはダメである。危機は資産作りのチャンスも生む。

株価は予想将来純益の割引現在価値(PER理論)

株価の根拠。

「非上場株」の株価は「時価の純資産÷株数=純資産方式の株価」。

市場で売買される株は「純資産÷発行済株数」=株価純資産倍率PBR。

日経平均のPBRは1.5倍、米国は5.3倍、世界平均は3.2倍(21年12月)。

市場には、証券会社が買わせるために宣伝している「割安株」は存在しない。

数%の利益を求め、世界の投資家があらゆる情報を使って必死に株を売買しているからである。

上場株式は「将来の予想純益の割引現在価値(NPV)」で評価される(純益は税引き後の利益)。

税引き後予想純益の将来の累計を「期待金利+予想利益実現のリスク率」で割り引いたものが「理論価格」(その価格周辺を株価が波動する)である。

❶会社の予想純益が大きくなり、❷期待金利が低下し、❸将来の利益のリスクが減ると「次期予想純益÷株式益回り=次期予想純益×PER」は上がって理論株価も上昇する。

ITベンチャー企業では、今は赤字なのに株価は高いことが頻繁に起こる。

現在は赤字でも将来の利益が大きくなると投資家から期待されているからである。

次期予想PERが低い株価は「将来利益の伸びは小さい」と投資家が見ている。

このため日本株の予想PERは、米国株より低い。

株価が上がる時

❶次期予想純益が高まる、❷金利低下の予想、❸将来の利益実現のリスク率が下がる(=純益が増加する)という三つの内のいずれかが働いている。

日本の実質GDPの期待成長率は1%程度と低く(主因は三つ:高齢化、人口減、生産性の伸びの低さ)、GDPの元となる企業の将来純益の増加への期待値も低い。

日本株のPBRが低い理由は、日本が2000年以降「経済のデジタル化」という世界の潮流に遅れてきたことが主因。

ダウに追随する日経平均

東証の一日の売買高(3兆円)の内70%(2.1兆円)は海外からの売買。

海外とは、

❶租税回避地のタックスヘイブンからの米国系ヘッジファンド、

❷欧州の年金ファンドである。

ファンドの殆どは、所得税が無税のタックスヘイブンに本拠地を置いている。

日本株を多く売買しているのは、個人投資家の投資信託であるヘッジファンドと北欧と中東に多い年金ファンド(SWF:国家ファンド)である。

ヘッジファンドに預託された元本資金は三兆ドル(330兆円)くらいだが、証拠金に対してレバレッジのかかる先物やオプションを売買しているから、投資マネーは3000兆円くらいに膨らんでいる。

東証で約15%の売買をしているのは個人投資家(700万人)。「下がった時に買う逆張り」が多い。

逆に、ヘッジファンドのプログラムの過半はトレンドフォロー型

トレンドフォロー型は上げも下げも大きくする作用を持つ。

日本の個人投資家はヘッジファンドが売って下がった時、買いを入れるというのがお決まりのパターン。

海外ヘッジファンドと国家ファンドからの買いが増えるのはダウが上がった時。

その理由は国際的な金融取引で米ドルが60%を占め、ドルでの株式売買が世界の株価を決めているからである。

日経新聞はヘッジファンドを投機筋としているが会社を買うM&A以外全てが利益を目的にした投機である。

ヘッジファンドのマネージャーは自分が売る時、日本人に高く買わせるために日経新聞に情報を流していることも多い。「投機筋は***としている」という記事がそう。論評は参考にならない。

株価が30%以上下がると、株担保で銀行と企業間および投資家間短期融資が行われている米国では、証拠金に穴が開いて金融危機になっていく。

先物市場とレポ金融で追証が必要になるからである。

下げ相場のチャンスを逃さない

恐慌は、毎回「資産家と所得富裕者を世代交代」させていく。

冷静な経済合理の視点に立つと、ロスチャイルド家の当主のように「恐慌を持つ感覚」が生じるだろう。

多くの場合、一方向に動く下げ相場の時は、富裕になるチャンスが転がっている。

オクト
オクト
暴落はウェルカム?
カイト
カイト
災害と同じで常日頃からの危機管理が大事

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